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このため少し人工的になりますが,製品の顧客別売上比率で製品の在庫と売掛金残高を分配することで対応するのがよいでしょう。
顧客別売掛金比率と売上比率の複合比率で分配するのも,一つの方法です。
最後は設備投資ですが,製品開発や製造の設備であれば,製品ごとのキャッシュフロー把握においては,その投資金額を直課します。
しかし,オフィス設備や製造部門の共通設備は配賦にならざるをえません。
これでは,人工的になり好ましくありません。
したがって,オペレーティング・キャッシュフローをベースとして,これに直課できるもののみを取り込んだ疑似フリー・キャッシュフローを把握するのがよいでしょう。
さてミクロ的課題と命名したのは,事業単位を細分化したものを単位とするためです。
しかし,よく考えると,この問題はマクロの事業(部門)単位と共通の性格をもっています。
マクロでは,企業を超えて事業というくくりが必要で,そのための仕組み,特に情報システムや管理連結が必要でした。
これと同じで製品・サービスが子会社を通して,顧客に提供される場合もあります。
また製品をつくるのに,子会社で部品を製造して親会社に納入する場合もあります。
そうすると,事業と同じ管理連結をする必要が生じます(図3-6)。
製品をバリューチェーンで串刺しにして,キャッシュフローを把握するのです。
製品連結とでも呼びましょう。
顧客別にも同じことがいえ,顧客連結となります。
これらの情報は,製品・顧客戦略や対顧客への提案用ツールとして大変有益となります。
課題は,グループ会社全体を網羅する情報の収集です。
共通の情報システムをグループで有していたり,大幅なコスト削減も考慮に入れたシェアドサービスセンクーが存在すると,情報収集が比較的容易となります。
また最新の情報テクノロジー,例えばデータウェアハウジングなどを使って情報を捕獲します。
しかしない情報はどうしようもありません。
この場合はあきらめるか,人が手で個別にインプットせざるを得ません。
一方,技術的な話になりますが,販売・物流・経理等オペレーションの情報システムから情報をじかにとる仕組みにしてしまうと,要件が変更された時の修正が大変になり。ます。
情報収集の末端という点では,オペレーションシステムが位置付けられますが,これと情報提供との間に管理会計専用の仕組みを構築して(グローバル・グループ会社管理データベース),独立したフレキシブルな仕組みを構築するのが理想です。
ROE (Return On Equity=株主資本利益率)は,当期純利益を株主資本残高で除して求められ,企業の経営指標としてよく使われます。
図3-7では, ROEを構成要素にブレークダウンしています。
分解にはいろいろな方法があり,これは一例です。
ここでは伝統的な財務分析の復習という意味からも, ROEについて少し検討してみましょう。
ROEはROI(Retune On Investment 投下資本利益率)と財務レバレッジ効果,そして税率の影響に分解されます。
ROIは,売上高事業利益率と投下資本回転率に分解できます。
ここでいう事業利益とは,金利・税控除前利益(EBIT : Earning Before Interest and Tax)のことです。
投下資本の概念および資本利益率における資本と利益の対応については図3-8を参照してください。
売上高事業利益率は,売上原価率,売上高販売費一般管理費比率等にさらに細分化して検討できます。
また投下資本回転率は,売上債権回転率,在庫回転率,固定資産回転率等に細分化できます。
また財務レバレッジ効果はROI,負債利子率およびDE(Debt/Equility)レシオによって求められます。
ROE増大のためには,これらの要素に着目します。
m キャッシュフローベースの経営指標損益計算書(特別損^3-;資本利益率の構造 1990年代半ば以降,経営目標にROEの向上を掲げる日本企業が多くなりました。
その背景には,次の2つの現象があります。
なお,ここでいう日本企業とは,平均的日本企業像という意味で,すべての日本企業という意味ではありません。
念のため。
NEEDS-COMPANYのデータによると, 1996年3月期の上場企業のROEは3.43%と10年前の約4割程度に落ち込んでいます。
過去の成長経済下で育まれた先行投資型の経営行動が,成熟経済の中でも抜けなかったことが,その原因の一つです。
また1980年代終わりのバブル経済期に大量のエクイティ・ファイナンスが行われたこと,そしてバブル期の投資は非常に甘い採算予測に基づくものが多く,その結果多額の不良資産が発生したことがあげられます。
資本市場の国際化進展によって,日本の株式市場における外国機関投資家の持ち株比率が上昇しています。
また,特徴的であった株式相互持ち合いが解消の方向にあり,持ち合い株式の比率が低下しています。
株式投資自体からのリターンを期待し,投資先のリターンに不満な時は,その経営に干渉しようとする投資家が増加しているのです。
ROEは,株主資本が効率的に運用されているか否かを示す指標の一つであり,資本効率低下に悩む企業経営者と,バブル崩壊以降の株式市場低迷に業を煮やした投資家が着目し始めました。
従来から株主へのリターンが重要な経営課題であった欧米企業では, 1980年代後半から経営指標の見直しが進行し,企業価値,CFROI,EVA,MVA等がクローズアップされました。
そしてROEはあまり重要視されなくなっています。
これは,投資家側から見た投資先企業の評価指標としても同様です。
1990年代後半になってやっと,日本企業は資本効率向上,株主へのリターン重視を経営課題として認識しました。
そして資本効率を測定する指標で,かつ,わかりやすいROE向上を経営目標に掲げる企業が増えました。
しかしROEは,問題が多い指標なのです。
先進的企業はそれに気がついたからこそ,経営指標の見直しを進めてきました。
以下ROEの問題点をあげてみましょう。
ROEの分子であるR (Return)は当期純利益です。
第1章や第II章で述べたように,会計上の利益は,企業の業績測定や意思決定のための指標としては不完全なものです。
ROEは単年度指標です。
例えば「今年度のROEは11%になった」とか,「2001年度のROE目標値15%」とかという形で示されます。
そこには成長という概念がありません。
短期的利益にこだわり,当年度のROE向上を目指した場合,研究開発等の将来に向けた投資を中止すれば実現できるかもしれません。
しかし将来に禍根を残すでしょう。
またROEが同じ企業でも,成長性が違うと株主にとっての価値は異なります。
ケーススタディで考えてみましょう。
表3-2および表3-3は,ある2つの企業,X社とY社の今後5年間の業績予測と,それに基づくROEおよび株主価値の計算を示したものです。
X社とY社ともに,ROEは20%です。
また,その内訳のROI,財務レバレッジ効果,税率のすべてが同一になっています。
両者の違いは,成長性にあります。
X社はリターンの半分を配当金として支払い,残り半分を再投資します。
その結果,売上高や投下資本の成長率が年率10%になります。
一方で, Y社はリターンの全額を再投資して,売上高や投下資本を年率20%で成長させ,その上で, ROEがたDEレシオが高くなると,一般的に信用力が低下し(信用格付が引き下げられたりします),負債利子率が上昇します。
極端な場合では倒産の危険さえあります。
よって,目標とする信用力が保てるDEレシオを設定して,レバレッジ活用をそこまでにとどめる必要があります。
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